稲荷湯長屋オープンデイ開催!|せんとうとまちニュースレター vol.6
春らしい陽気とともに、桜並木を散歩するのが楽しい季節となりました。新年度になり、新しい職場や学校など、心機一転なタイミングの方も多いかもしれません。新生活を気に、ぜひ、ご近所の銭湯に足を運んでみてはいかがでしょうか?
今回は、プロジェクトも佳境を迎えてきた稲荷湯長屋の再生プロジェクトにて、先日はオープンデイを開催し、少しずつですが、ご近所の方々に場所を開きつつ、この長屋をどのように活用していくかを検討し始めています。
他にも、銭湯コラムやNetflixでテルマエ・ロマエのアニメの配信開始など、銭湯に関連したお知らせをお届けします。
引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
稲荷湯長屋再生中 オープンデイを開催
せんとうとまちでは、滝野川の稲荷湯の修繕及び稲荷湯のおとなりに併設する長屋の再生プロジェクトを進めています。長らく使われていなかった築100年以上の長屋を整備し、ご近所の方々が、入浴前や湯上りなどで立ち寄っていただけるような場所となるよう様々な方々の力をお借りして修繕しています。
工事も終盤に差し掛かった3月中旬、地域の方々に内部の様子を見ていただくオープンデイを開催しました。当日は近くの庚申塚から建具職人さんが来ていただき、障子や板戸を合わせる作業をしたほか、キッチンカウンターのタイル張りをご近所の方にもお手伝いいただきながら、丁寧に貼っていく作業を行いました。タイルの一部は、稲荷湯のお風呂場にも使われているものです。長屋では、今では貴重な伝統工法の土壁を再生しており、途中段階の荒々しい壁の様子も披露することができました。
2日間のオープンデイでは、ご近所の皆さまを中心に60、70名ほどの方々がお越しいただき、昔ながらの長屋を懐かしみ様々な地域の昔話をしてくださいました。
ご近所の皆さんに長屋でやってみたいこと、長屋に期待していることを伺い、さまざまなご意見をいただきました。いただいたご意見をもとに、今後の長屋の運営や企画などの参考にさせていただきたいと思います。
このニュースレターをご覧になっている方で、長屋を活用してこんな取り組みをしたい、と考えている方がいらっしゃれば、ぜひご連絡ください。
なお、次回オープンデイは4月17日(日)を予定しています。詳細の情報などは、せんとうとまちのTwitterやFacebookをご覧ください。
■コラム「せんとうとまちと私」
せんとうとまちに関わるメンバーらによるコラムをご紹介します。「せんとうとまちと私」をテーマに、それぞれの考えや普段見聞きするちょっとした話などを思い思いに掲載してまいります。
今回は、せんとうとまち理事の1人である江口より、地域における銭湯の魅力について書いていただきました。
まちの文化を感じとる3つの場所
コロナ禍で今はほとんど行けていませんが、コロナ以前は、地方出張が多く、全国各地を訪ね歩いていました。
色んな地域に行く度に、必ず行くところがあります。それが、地元の方が切り盛りされている「居酒屋」、大型書店ではない地元で古くから営まれているまちの「本屋」、そして「銭湯」の3つです。この3つを行けば、これまでの経験から、おおよそその地域の文化やまちの雰囲気の一端を感じることができると思います。
まちの居酒屋に行けば、その地域で採れた旬の食材や地のものが振る舞われ、郷土料理やお酒を味わうことができます。時には、隣にいる地域の方に地元のことを伺うことができたりします。その場所ならではのものを食べることが、地方に出張に行く一番の醍醐味と言えます。
本屋さんに行き、本棚をのぞけば、地元の人たちがどのような本を読んでいるのか、読みたいと思っているのかが分かります。普段、本やメディアに関わる仕事をしている身としても、どんな本が置いてあるかはとても気になります。選書、本の並び、置き方などから、その本屋やまちの文化の高さを感じることが多くあります。さらに、地元出版社が発行している歴史文化本など、その地域でしか手に取ることができない本があれば、ついつい買ってしまうことも。
そして、銭湯に行けば、地域の日常の様子を肌で感じることができます。銭湯は一人で入るお風呂と違い、銭湯は他者の振るまいが自分に作用し、自分の振るまいが他者へ作用する、相互的なコミュニケーションが存在します。公衆浴場としての銭湯は、非日常なものではなく、日々の営みや生活と地続きにある日常がそこにあります。郷には入れば郷に従うように、そのお風呂にふさわしい振る舞い方が求められます。他人に迷惑をかけないようにすることが求められ、いわばそこには小さな「社会」があります。
居酒屋や本屋は、あくまで外からの人としてのまなざしで振る舞いますが、銭湯では、なんだか、その瞬間は地元民の一人になった気がします。銭湯がある場所の多くは、昔から続く下町な場所であったり、古くからある生活習慣が残っているエリアだったりします。だからこそ、その地域の住民に一瞬とはいえ、入った感覚を持つことで、外からではなく内側から地域の文化を感じ取ることができるのが、銭湯の面白さであり、楽しさだと常に感じています。そうした場所の魅力が根強く残り、人々の生活文化が豊かに存在する地域にこそ、地域の魅力や地域の持続的なコミュニティが育まれています。銭湯が持つ、こうした魅力や価値を、いま改めて問い直すとともに、地域とともにある銭湯のあり方について、「せんとうとまち」では考えていきたいと思います。
居酒屋も本屋も、そしてまちの銭湯も、まちの生態系として、地域の文化資源な場所がこれからもしっかりと豊かに存在するように、みなさんもぜひ足を運んでみてください。(写真:鈴木渉、彦根の山の湯にて)
江口晋太朗
■メディア掲載
文京学院大学のYoutubeチャンネルに参加
文京学院大学が配信しているYouTubeチャンネルにて、栗生はるかが登壇しました。
「文京Deepな人2021 「第2回 文京区の銭湯事情と白山界隈」」と題したテーマで、銭湯にまつわるお話をさせていただきました。
▼文京学院大学:ねこっちさんビデオ通信~文京Deepな人2021 「第2回 文京区の銭湯事情と白山界隈」
https://www.youtube.com/watch?v=eqNTZIr60Tk&t=1s
■銭湯ニュース
Netflixで「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」が配信開始
古代ローマ帝国の浴場技師が、ひょんなことから現代の日本へタイムスリップ。そこで出会った日本の風呂文化にヒントを得て、斬新な浴場の数々を考案してゆくヤマザキマリさん原作コミック「テルマエ・ロマエ」が、Netflixでオリジナルアニメとして配信が開始されました。原作同様、今作も稲荷湯をモチーフとした銭湯が登場し、日本の銭湯文化に主人公であるルシウスが衝撃を受ける場面も。また、本作は原作だけでなくオリジナルストーリーも追加されているとのこと。銭湯や温泉文化を伝える本作、ぜひご覧ください。
▼Netflix「テルマエ・ロマエ ノヴァエ」
https://www.netflix.com/jp/title/81264354
神戸市内の銭湯32施設が、大学生無料にし、銭湯魅力を発信
3月16日付の神戸新聞によると、神戸市内在住か市内の大学に通う大学生を対象に、銭湯(一般公衆浴場)32施設の入浴料が無料になるという試みを、神戸市が今夏から開始するというニュースがありました。
若い人たちに銭湯に親しみを覚えてもらうため、神戸市による独自の取り組みとして開始するとのこと。電子チケットの導入や地域コミュニティとの接点づくりとしてこの政策、神戸市だけでなく他の地域にもぜひ広がってほしいものです。
▼銭湯に親しんで 神戸市内の32施設、大学生無料に 文化の「復権」存続目指す(神戸新聞)
https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202203/0015137864.shtml